激戦地から考える平和 白河で戊辰講演、歴史家・加来耕三さんら登壇

戊辰戦争に対するそれぞれの考えや思いを披露する(左から)加来さん、山本さん、鈴木市長=白河市・白河文化交流館コミネス

白河戊辰150周年記念事業「甦(よみがえ)る『仁』のこころ 特別講演」が15日、白河市で行われ、歴史家の加来耕三さんやNHK・BSプレミアム「偉人たちの健康診断」で知られるNHKアナウンサーの渡辺あゆみさんらが登壇した。来場者が戊辰戦争の意義を再考しつつ、日本の平和な未来について思いを巡らせた。

加来さんは「明治維新まさかの深層」の題で講演し「これまでの歴史の知識を疑い、もう一段深く白河口の戦いなど戊辰戦争を考えてほしい」と訴えた。渡辺さんは親族に本県出身者が多いことを紹介しながら「住民らを巻き込み、激戦の舞台になった白河。それでも東西両軍の戦死者を敵味方なく埋葬した心優しい地域」と、見つめ直すべき「仁」の心を説いた。

その後、講演した2人と大河ドラマ「八重の桜」の脚本を手掛けた山本むつみさん、鈴木和夫白河市長を加えてのシンポジウムが行われた。山本さんは「東北で何があり、東北の復権を願い脚本を書いていた」などと「八重の桜」に対する思いを語った。鈴木市長は幕末に勘定奉行など幕府の要職を歴任した小栗上野介を例に挙げ「江戸時代を土台にして明治時代あり、幕府にも優秀な官僚がいた。戊辰150年は今後の地方、国造りを考える機会にしたい」などと考えを述べた。

加来さんの講演を聴いた郡山市の会社員男性(38)は「当時の世界情勢が戊辰戦争に影響を与えていたなんて」と新たな発見に驚いた様子。白河藩の武士が先祖という東京都の女性(23)は「新選組が好きで参加した。これを契機に史跡などを巡りたい」と刺激を受けていた。

◆加来耕三さん講演要旨

明治維新はアヘン戦争で清が英国に負けたことがきっかけとされる。幕府をはじめ、世界に目を向けていたエリートたちは世界の帝国主義に気付いていた。日英修好通商条約などにはアヘンの条項が盛り込まれており、日本は列強から狙われていた。

清は圧倒的な兵力を持ちながら、国という概念がなく敗北した。日本のエリート層はアヘン戦争から多くを学び、幕府一派、または長州、薩摩藩による中央集権化で二分した。

白河口の戦いを考察すると「やる気」が違っていた。朝食も惜しんで戦った西軍、東軍は身支度に時間をかけていた。戊辰戦争が長引いていたら日本の独立の尊厳は保てなかっただろう。

歴史は何となく知っているが、一番たちが悪い。「仁」の心を持っている白河の方には立ち止まって考えてほしい。勝ち負けでなく、何を得て何を失ったのかを。

◆渡辺あゆみさん講演要旨

第1次世界大戦中、徳島県鳴門市にあった板東俘虜(ふりょ)収容所で、収容所の所長の松江豊寿はドイツ軍捕虜に敬意を持って接した。松江は会津藩士の長男で、敗軍の将となった父の処遇を見て、負けた相手であってもきちんと接しなければならないと子ども心に思っていた。白河の仁の心にも通じる精神だと思う。

白河は、白河口の戦いの激戦の舞台になり、平民も苦労した。敵軍の荷物を運ぶのを手伝った平民が、敵に味方したと殺されたり、スパイだと疑われたりしたと資料に残っている。それでも白河の人は、東西両軍を平等に弔っている。屍(しかばね)になってしまった以上は、敵も味方もないと、優しい心を持って接している。白河踊りが山口県に伝わっているとも聞いた。関ケ原の民も関ケ原の戦いの後、東西両軍を平等に弔った。日本人には寛容な心があると私は信じている。